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- K.R., エディター

近年テクノロジーが進化したことで、研究者は以前よりも迅速にアイデアを共有できるようになりました。しかし、科学者が素早く簡単にデータを共有できるサイトが増えるにつれ、学術出版業界では、こうしたサイトの存在は収益性の高いビジネスモデルに対する脅威と見なされ、先行きを懸念する声が高まっています。

ResearchGateなどの研究者用ウェブサイトは、手紙のやり取りをしていた頃とは比較にならないスピードで効率良く情報交換ができ、科学者にとって重要なツールの一つとなっています。ただ、こうしたサイトには、違法なファイル共有行為を見て見ぬ振りをしているという批判もあります。ResearchGate はつい最近、著作権で保護されている科学論文の違法なアップロードを許可していると激しい非難を浴びたばかりです。今年9月、英国のオックスフォードとオランダのハーグの2カ所に事務局を置く国際科学技術医学出版社協会は、購読料を支払わなくても簡単にアクセスできる科学論文が増加していることについてResearchGateに対し懸念を表明しました。140以上の学術出版社が加盟する同協会は、他のユーザーとの論文の共有が合法的かどうか自動的に判断するシステム (共著者とは簡単に論文の共有ができるが、著作権で保護されている論文の一般共有はできないシステム) をサイトに導入することを提案していますが、この方法はResearchGateのユーザーにはおそらく不評でしょう。

「科学の質を保証する費用を支払うのは誰か」という問題は昔からあり、現在も研究者にとって身近な問題です。論文共有サイトを支持する人々は、学術出版業界は過剰に利益を得ようとして、実際には科学の発展を阻害していることや、研究者や科学ファンの間では長年こうしたビジネスモデルに対する不満がくすぶり続けていることを指摘しています。出版社からすれば、学術出版社の打倒を使命に掲げるSci-Hubのような論文海賊版サイトよりも、ResearchGateのようなサイトの方が話が通じると考えているでしょう。Sci-Hubは出版社から訴訟を起こされ、サイトの閉鎖と罰金を命じられました。ただ、サイトは別のドメインに移転して運営が再開されています。出版社としては、このサイトへの一般アクセスを完全にブロックしたいでしょうが、そのような措置は米国ヨーロッパで似た措置に対し抗議活動を展開したことのある情報の自由を守るために活動しているグループから強い反発を受けるでしょう。それに、たとえサイトを閉鎖しても、別のプロキシサーバーやVPNサーバーを経由すれば、たいていは短期間でサイト運営を再開できるものなのです。

論文共有サイトの支持は増加の一途をたどっており、譲歩の姿勢を見せる出版社も出てきました。米国地球物理学連合とワイリーは、時間がかかる査読前にユーザー同士が論文を共有できる新しいプレプリントサーバーESSOArの開発を最近共同で進めています。これまで大手出版社は、論文の著者がプレプリントサイトを使用して出版前の論文を共有することに反対しており、プレプリントサイトで共有された論文の出版を拒否することがたびたびありました。オープンリサーチの支持者と不支持者が対話を始めたことは良い兆候であり、今後に期待できるかもしれません。しかし、論文共有サイトのささやかな試みにさえ反対する強硬な出版社がいる限り、学術論文の著作権をめぐる議論は続くでしょう。

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