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- A.S., エディター

世界中の科学者はCOVID-19と闘うために精力的に投稿を続けており、知識のリポジトリが急速に拡大しています。また、関連論文の普及を促進するため、すでに多数の主要出版社が新型コロナウイルスに関する論文のペイウォールを無料公開しています。 しかし、学術出版業界における現時点での最大の疑問の1つは、現在の出版業界の動向が、世界的緊急事態が収束した後も続くのかどうかということです。

学術出版業界はCOVID-19危機の間、いくつか驚くべき変化を見せてきました。その多くは研究者自身の懸命な努力によるもので、たとえば、ある取り組みではボランティアの査読者グループが迅速な査読を提供しています。COVID-19関連論文をより早く出版するために、出版社が実際に出版プロセスの迅速化を成し遂げたことが確認されています。これらの手法は非常に有効ですが、いったん緊急事態が収束すれば、現行システムの効率改善には繋がらないかもしれません。

しかし、他の方法は今後も利用が継続または拡大される可能性があります。medRxivやbioRxivなどの生物医学論文のプレプリントサーバーはこれまでになく活用されており、プレプリントを導入した分野では今後もこの傾向が続くかもしれません。また、COVID-19関連のプレプリントをキュレートするイニシアチブが立ち上げられ、スタンダードな出版の枠組みの外でも査読が可能であることが示されました。プレプリントのほかにオープンアクセスジャーナルもますます普及しており、経済分析によると、オープンアクセスジャーナルの収益とオープンアクセス論文の数は増加しています。

注目すべきは、オープンアクセスへの支持が新しいものではない点です。以前、「エディターの視点」の記事で取り上げたように、2018年9月、研究者に論文をオープンアクセスジャーナルのみで発表することを求める意欲的なイニシアチブ「プランS」が発表されました。諸々の遅延によりプランSの始動は延期されましたが、必要に迫られ、ますます多くのオープンアクセスの形態が―こうした措置の多くが一時的なものであるにもかかわらず―検討されているようです。現在のCOVID-19危機をきっかけに、オープンアクセス出版は政策立案者、資金提供者、研究者の間で議論の最前線となっていますが、現在の危機が学術出版の歴史の転換点として振り返られることになるのかどうかはまだわかりません。

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